展覧会
2004年11月10日(水)〜12月10日(金)
「Landscape」
なにかを思い出そうとしたとき、場所や物が、記憶の中でひずみをきたすことがあります。時としてそれは、美化されていたり、他のものと混ざっていたりして、自分でも信じられないくらい歪んで記憶していたこともあります。見たことのあるTVドラマ、旅行先の風景、本屋で立ち読みをした時に目にした1ページ……。ほんの数秒前の出来事さえもあいまいな自分地震の記憶や認識がなぜか一人歩きして、まったく別のイメージへと変質してしまう気持ち悪い感覚。
過去の作品において私は、世界と人との境界である皮膚をとおし、私達の存在を表現する試みとして、平面、またその制作過程のなかで「世界をどのように認識するか?(もしくは世界はどのように認識されるのか?)」という疑問を持って、世界を身体感覚で捉える人型ピンホールカメラのプロジェクトや、日常目にする現実の物体をシリコンゴムの表皮に置き直して作るオブジェなどを制作してきました。
今回、展開するインスタレーション「Landscape」はプラスティックを用いて作られた街のジオラマです。
まるでどこかでみたような未来都市のイメージ、もしくは現実に存在するビルの形。とりとめのない漠然としたそんな存在を、レディメイドのチープなコップや軽量カップ、その他の材料を用いて私はジオラマの都市を制作しました。日常なにげなく目にするそれらの素材を用いて築きあげた都市のイメージを、記憶や認識の過程で崩れ、不確かなイメージへ変質していくように、それらを分解する溶液に浸し、溶解するインスタレーションを作り上げようと思います。
展覧会期間中ゆっくりと変形していくその街のイメージは、私達が認識する世界の存在のありかたをイメージする方法になるのではないのでしょうか。なぜなら今存在している(であろう)世界でさえも、数秒先にはあるのかないのかわからない、不確かな存在なのかもしれないのですから。